2013/06/24

HANNIBAL Season1 Finale

米NBCドラマHANNIBAL ハンニバル 第1シーズン最終回 13話 "Savoureux"

※以下ネタバレ、憶測がてんこ盛りですのでご注意下さい。

ハンニバル・レクター博士のマッツ・ミケルセンが素敵すぎてレクター博士贔屓目線で観てきたせいかもしれないが、博士の所業を私たち視聴者は知っているのに、それでも最後の最後まで博士は本当はウィルを助けたいんじゃないかと思いたくて、ウィルのために、救えなかった命のために涙する博士にころっと騙されそうになるほど、心締め付けられるマッツの名演。

娘の身代わりに娘に似た少女を殺し続けていたギャレッド・ジェイコブ・ホッブス。捜査の手が迫っていることを知り最後に娘アビゲイルに手をかけようとしたところ、FBI特別捜査官のウィル・グレアムに撃たれ、アビゲイルは深手を負いながらも命をとりとめる。ホッブスが息を引き取ろうかという刹那、彼はウィルに"See?"と語りかける。Minnesota Shrike(ミネソタのモズ)と呼ばれたホッブズの事件から全ては始まる。

その後も立て続けに起こる猟奇的な事件。そのなかに紛れ込むChesapeake Ripper(チェサピークの切り裂き魔)と呼ばれるレクター博士の犯行。

ホッブスの犯行を真似てキャシー・ボイルを殺害し、ウィルをホッブズ逮捕に導いたMinnesota Shrikeの模倣犯。キャシー・ボイルの兄の犯行と思われていたアビゲイルの友人の殺害、その他ウィルの周りで起こった何のつながりも無いと思われていた事件もMinnesota Shrikeの模倣犯の仕業ではないかとウィルが疑い始め、その一方でホッブズを殺したことに苛まれ彼の幻を見るようにり、ホッブズの思考に引き込まれ、夢遊病や幻聴、時間の喪失など自分自身をコントロール出来なくなりつつあるウィルが、事件に何かしらのかかわりがあるのではと疑いを持たれるのである。

そんな中、また時間が飛び、記憶が無いウィルがアビゲイルを殺してしまったのではないかと自らを疑う状況に追い込まれる。
すぐさまレクター博士に助けを求める。そして震えるウィルに毛布かけてあげるレクター博士
ウィルのアビゲイル殺害を疑うに足る証拠を見せられ、もう助けられないと嘆くレクター博士
ウィルの自宅からはアビゲイルだけでなく、ウィルがMinnesota Shrikeの模倣犯の仕業ではないかと疑い始めていたその他の事件に関する証拠も見つかり、もはや身の潔白を証明するすべがないウィルは拘束される。

アビゲイルを救えなかった。ウィルも救えると思っていたのにと嘆くレクター博士
ウィル自身アビゲイルについては殺したのか、殺してないのか分からないが、その他の事件については時間の喪失は無かった。それにもかかわらず有るはずもない証拠が見つかったことにより、事件の事をよく知り、かつウィルの精神が危うく何を言っても信じてもらえない状況を知る者に罠にかけられたのではないかと疑い始める。
ウィルの匂いがする
あ、やっぱりウィル来てた
輸送中に逃亡したウィルはレクター博士の所へ。
ウィルにかけられた容疑について検証する二人。
犯人を捕まえるために犯人の頭の中に入り込む。そうするうちに犯人の思考がウィルの中にも入り込んむのだと。闇を覗き込む時、闇もこちらを見返している。
二人は全てが始まった場所、そしてアビゲイルが殺された場所ミネソタへ。

ここからの数分の展開は本当にゾクゾクした。
ほんのわずかにマッツの声が低くなっている。顔つきはもはやウィルを心配していたレクター博士のものではない。
ウィル、君はその特異さゆえに孤独なんだよ 

この時のマッツの表情は鳥肌ものだった

犯人の気持ちにシンクロすることにより動機を見つけ事件を解決してきたウィル。レクター博士の犯行に動機はない。狂気の縁にいる人の背中を押したらどうなるのか興味があるだけ。レクター博士の悪意はウィルの想像を超えている。だから最後まで気づけなかった。
そして博士に背中を押されたウィルは博士に銃を向ける。
ウィルは自らギャレッド・ジェイコブ・ホッブスを撃った正にその場所でかけつけたジャックに撃たれ、意識を失う刹那"See?"とつぶやく。

印象的なシーン。第1話で命を取り留めたアビゲイルを見舞うレクター博士とウィル

最終話ウィルを見舞うレクター博士とジャック

第1話でウィルに「ジャックは君のことを特別な時にしか使わない繊細なティーカップみたいに思っている」と語るレクター博士。ウィルは笑いながら博士にはどう見えているのか尋ねると「蛇が忍び寄ってきた時のために床下に飼っておきたいマングース」と答える。意味が分からず怪訝な顔をするウィル。
2年前ジャックの指示でChesapeake Ripperであるレクター博士を追いつめたFBI研修生ミリアム。今、レクター博士を追いつめるのはウィルであり、ウィル自身がレクター博士の嫌疑を受けることによりその罪から逃がすのである。

ホッブスの思考にシンクロし、その思考に囚われ、自らホッブスになったように感じるウィル。父ホッブスに殺されないように犯行を手伝っていたアビゲイル、その抱える闇ゆえにレクター博士の琴線に触れた者達。レクター博士がセラピーで語っていたウィルに対する友情、アビゲイルを思う父親のような気持ちもおそらく嘘ではないのだろう。でも助けたいのではない。守りたいのではない。そういう特別な人達だからこそ、狂気の中に追いやりどうなるのか見たいのだ。彼はサイコパスではない。サタンなのだ。
ウィルにお別れを言いに来たレクター博士。BGM "Vide cor meum" は映画「ハンニバル」のオペラシーンのために書き下ろされた曲

最終回最後のカット。最初で最後。レクター博士の真の姿
私たちが映画でよく目にしたアンソニー・ホプキンズ演じるハンニバルが檻の中にいる様。このドラマで檻の中にいるのはウィル・グレアムである。第1シーズン通して語られてきたのはいわばエピローグ。レクター博士のセラピストがレクター博士のことを“仕立ての良いパーソン・スーツを着ているよう”と表現していたが、最終話、その周到さにおののき、最後の数分でようやく真のハンニバル・レクターが姿を現す。

最初はちょっとおでこにかかってた髪がだんだんフルオールバックに。印象が俄然カリスマティックに。本当にゾクゾクしぱなっしの最終話だった。レクター博士の正体に気づいたウィルでさえ博士がChesapeake Ripperであるということはまだ知らない。シーズンフィナーレを待たずに第2シーズン制作が発表された。次のシーズンではどんなハンニバルが観られるのか!
予定では第4シーズンで「レッド・ドラゴン」、第5シーズンで「羊たちの沈黙」第6シーズンで「ハンニバル」そして第7シーズンはその後の話になるかもとの事。('Hannibal' Bryan Fuller on future: 'Silence of the Lambs is season five' - US TV News - Digital Spy
どうか予定どおり順調に最後まで制作されますように!アンソニー・ホプキンスの怪演も素晴らしかったが、マッツが演じる洗練され、男性も女性も魅了するハニバル・レクターで続きが観たい!

ちょっと気になったこと。博士論文の時にレクター博士と恋愛関係にあった人は今後語られるのか。


  • HANNIBAL:シーズン前半の感想

2013/06/13

偽りなき者 Jagten


邦題「偽りなき者」 原題"Jagten" 英題"The Hunt"

ひどく打ちのめされて劇場を後にし、日が経っても何度も反芻していろいろ考えている。
私はこんな絶望的に身の潔白を証明できない状況で親しい人を信じられるだろうか、私自身は信じてもらえるだろうか。

マッツ・ミケルセンがカンヌ国際映画祭主演男優賞受賞した作品。
何が凄いってみんな役者さんであることを忘れてしまうほど、本当にクララに何でやねんと詰め寄りたい、テオを、ルーカスの友達だった人達にあんたら長い間いったいどこを見てたのかと詰め寄りたい。
クララの兄とその友達をぶんなぐってやりたい。ルーカス役のマッツが最後の教会でのシーンに8時間泣きっぱなしで集中力が切れなかったというエピソードを聞いた時にえ?ああ、そうか演じてたのか!と思うぐらいにマッツはマッツでなくルーカスでした。

ルーカスがテオの家に行って奥さんの目を盗んでパイを食べる時のさりげなくて自然なチームワークは二人の付き合いの濃密さを物語る。クララは線を踏まないように歩いている。これが話の中で色々なきっかけになると同時にクララの性格も表している。
園長先生がクララの話をリアルな言葉ゆえ信じてしまったその言葉の出所や、クララが話は嘘だったと言っても逆に信じてもらえない状況の巧みさ。キャラクターを表す伏線や話の流れがさりげないのに破綻しないから真実味があり、故に絶望的である。小さな雪の玉が転がりだして大きく大きくなっていってもはや誰も止められない。

小学校も無くなってしまうような小さな街。みんなが古くからの知り合いである。そんな付き合いの中ででも信じてもらえない。そんな閉鎖的な街だからこそなのか。
この町にはルーカスの全てがある。ここにしか居場所はない。

事が起こるまでのルーカスの日々が平凡だけど、完璧でないけれど幸せで、その分途中からの展開が辛くて辛くてそれでも僅かな希望を抱かずにはいられなかった。マッツが素晴らしすぎてその分辛すぎた。
また観たいでももう観たくない。

話とは関係ないけど北欧映画だから幼稚園の家具とか素敵なんです。テオの家は扉と部屋の中の壁がコーディネートされていて本当に素敵。

カンヌのレッドカーペットでマッツはクララ役のアニカちゃんのことをずっと気にかけてあげてて9:03~雨が降ってるので階段をお姫様抱っこでワープ!マッツ素敵すぎる♥


2013/06/11

James Blake Japan Tour 2013@なんばHatch

James Blake Japan Tour 2013@なんばHatch 2013/6/7

1.Air & Lack Thereof
2.I Never Learnt To Share
3.To The Last
4.Lindisfarne
5.I Am Sold
6.CMYK
7.Digital Lion
8.Our Love Comes Back
9.Unluck
10.Limit to Your Love
11.Klavierwerke
12.Overgrown
13.Voyeur
14.Retrograde

Encore:
15.The Wilhelm Scream
16.A Case of You

舞台の上は最小限の物だけ。CDで聴いているよりびっくりするぐらい音が深く重い。
身体全体で吸収して耳にとどくような。あばらが震えっぱなしだった。骨電動のように。
まるでアスリートのような体躯から生まれる音はゆらぎが凄い。
歌い出しをその場でサンプリングして、自分の声を更に重ねていく。
言葉少ない歌詞が方々に拡散していく。音と光だけで作られる圧倒的な空間。
方向感覚を失ってしまうような時間だった。