常温で昇華するナフタリンを使った作品。日々形は変化し、輪郭があいまいになり、原型をとどめなくなる。
私の作品は変化を伴なう ――― 別に特別なことではない。
どんなに貴重な美術作品でも、そばにある身近なものでも、
そして形なきあなたの気持ちも。
すべてのものはとどまることなく変化しているのだから。
あるかなきかの変化を続けているのである。
私の作品の場合は、氷のように早くもなく、
ギリシャ彫刻のように遅くもない速度で変化をする。
どこが終わりでも、またはじまりでもない。
作品を見たあなた自身の想像力が、次の姿を決めるのである。
私が与えたうつろいのかたちは、そこに流れている今の儚さ、不確かさを知らせ、
また、記憶の力強さを教えてくれるだろう。
私は作品を残したくないのではない。きっと誰より作品を残したいのだ。
永遠に残る名品ではないけれど、忘れられない作品を作りたい。
-宮永愛子-
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