2012/09/13

世界平和記念堂



設計:村野藤吾

正面からバシャバシャと写真を撮りまくっていたら、「ここから撮ったら全体が綺麗に入るんですよ」と地面に→が書いてある撮影スポットを教えていただいた。「普通の観光の人なら数枚撮るだけなんだけど、さっきから凄い枚数撮られてますね。建築関係の方ですか?」と尋ねられたので、建築を観るために広島に来ましたと言うと、「私はこの建物を案内できる数少ない者の内の一人です。フライング・バットレス見せてあげましょう」と作業の手を止めて案内してくださいました。
聖堂脇の階段室から螺旋階段を昇る。ここは所謂バックヤードになる訳だけど、階段の曲線、手摺りなどに村野さんのこだわりがひしひしと感じられる。聖堂左右にもうけられた上部の窓は松、竹の形を、照明は仏教のシンボル蓮の花を形取っている。天井は西洋建築のドーム状ではなく木材の天井が吊ってある。
半地階の地下聖堂は天井がゆるやかなカーブを描き、照明、窓、通気口は梅の形をしていて、至る所に日本の様式を感じさせるものになっている。

聖堂外部の屋根には鳳凰が佇んでいる。火に焼かれ灰から蘇る不死鳥フェニックスを日本でなじみのある鳳凰におきかえ、磔から復活したキリストと原爆投下によって灰の街と化した広島の復興を象徴しているそう。
戦後広島建築を語るに欠かせない丹下健三さんの広島平和記念資料館と村野藤吾さんの世界平和記念堂。丹下さんの広島平和記念資料館が時代や、国の違いを意識させない建物であるのに対して、村野さんの世界平和記念堂は西洋建築でありながらも日本の様式を取り入れた宗教、民族を分け隔てなく包括するように平和を願う建築になっている。

緩やかな光を取り入れるため、開口部に設けられた僅かな傾斜、壁面をつたう雨の道までも考慮に入れた煉瓦目地についてや、戦前の網入りガラスは本当に網が編んであったり、おそらく普段観ることが出来ない所も案内していただき、本当に貴重な話をたくさん聞かせていただいてとてもとても充実した建築探訪になったのだけど、その分写真を撮る手がお留守になってしまって、自分の不器用さと周りに気を取られすぎる性格にほとほとあきれてしまう。

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